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上海出張記 後編 [海外出張記]


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上海最終日。ホテルで朝食を取りながらアルセーヌと共に今日のプランを練ったところ、少しはアートを離れて観光しようということになり寺に行く事に。訪ねたのは市の南西部にある龍華寺という古刹。境内にはほとんど観光客もおらず、静かに祈りを捧げる地元の方がまばらにいるだけ。きれいに掃き清められた石畳にお線香の香り。二人とも寺の癒しパワーですっかりリフレッシュし再び街へ繰り出すことへ。






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お昼に新天地でアルセーヌの知人のオペラ歌手の方とランチをご一緒した後、郊外で開催されていた展覧会へ。'Bourgeoisified proletariat'(ブルジョア化したプロレタリアート)という皮肉なタイトルを持つこの展覧会は若手から中堅まで約40名の中国人アーティスト集めたグループ展で、ShContemporaryの期間に合わせて9月11日〜14日の4日間だけ開催されたもの。会場の上海クリエイティブスタジオは、松江(ソンジャン)地区にオープンしたばかりの文化施設で、4万平米の広大な敷地内に展示室やスタジオ等が入ったモダンな建物が点在している。



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会場に入りまず目に留まったのは、床のあちこちに転がるオレンジ色のピンポン球。中央の階段の上に巨大な点滴器を思わせる装置があり、透明なチューブにぎっしり詰まったピンポン球が一定の間隔で排出され音を立てながら転がり落ちる。拾い上げてみるとそこに小さく書かれているのは「ヘルペス」、「脳腫瘍」といった数々の病名。作者は楊振忠(Yang Zhenzhong)で、彼の代表的な映像作品 'I Will Die' に通じるものを感じさせる。なお彼は、劉建華(Liu Jianhua)、MadeIn/徐震(Xu Zhen)、施勇(Shi Yong)ら本展をキュレーションした9名のアーティストの内の一人。


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施勇(Shi Yong)とAugustine Sethによる作品 'The Borders Within'。彼ら二人が、他の出稼ぎ労働者に混じり建設現場で働いた模様をビデオと写真で記録したもので、壁面には作業日程や給与明細、実際に支払われた賃金も展示されていた。


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張雪(Zhang Xue)という作家の「歳月は過ぎ去る」という作品。アトムもドラえもんも、皆白髪のおじいさんになっている。












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奎(Huang Kui)の展示 'They still look beautiful'。中央のテーブルの上に年代物の食器やそろばん、時計などのがらくたが置かれており、周りの壁面にはこれらの品物をクローズアップして描いた油彩画が並べられている。窓辺に古い軍隊風の水筒を描いたデッサンがあり、横に「ここから見よ」と注意書きがあったので窓の外を覗いてみると、、、施設の庭には巨大な水筒の地上絵がっ!


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政治純形式(Polit-sheer-form)というアーティストの「豆腐」という作品。隣りの壁に斧が数本無造作に突き刺さっていたが、恐らくオープニングの際に壁をぶち抜くパフォーマンスが行なわれたものと思われる。なお、前夜に行なわれたオープニングではバンドの演奏などもあったらしい。左手奥はAlexander Brandtの「ドイツの特徴的な資本主義」というインスタレーション。





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Borges Libraryの本棚付き巨大自転車の前に立つアルセーヌ氏。この展覧会には他にも楊福東(Yang Fudong)や張培力(Zhang Peili)といった国際的に活躍するアーティストから若手の興味深い作品まで見所満載で、往復3時間掛けてもわざわざ見に行った甲斐がありました。またこの展覧会を見る限り、彼らの上の世代のある意味大仰で扇動的な作風に対して、新しい世代のアーティストたちはもう少し私的な視点に基づいて制作活動を行なっているような印象を受けた。







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市内に戻るタクシーは途中ヘビーな渋滞に巻き込まれ、次の訪問先M50に到着した頃にはすっかり日暮れ。6年前にここを訪れた時は、工場街の片隅に最初のギャラリーShanghART Galleryが移ってきたばかりだったけど、今や数十軒の画廊が集まり北京の798芸術区のミニ版といった感じ。入り口近くのカフェで休憩後ギャラリー巡りに出発。






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最初に訪れたのは上海の現代アートギャラリーの草分け的存在、ShangART Gallery(香格納画廊)。この時は二つのスペースを両方を使って、'Seeing One's Own Eyes--Middle East Contemporary Art Exhibition'(自分自身の目を見る-中東の現代アート展)という大規模な展覧会が開かれていた。タイトルからして中東のアーティストのグループ展と思いきや、どうやらそうではなく、除震(Xu Zhen)を中心に結成されたMadeInというグループがキュレーションしたコンセプチュアルな展覧会のようだった。


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この日は数軒のギャラリーでオープニングが開かれていたが、多くの作品は既に名を成した作家の手法やスタイルを模したものの様に思われ、残念ながら心躍る様な作品には出会えなかった。写真はiland6というギャラリーで行なわれていたオープニング。









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夜はほぼ毎晩のように、新天地(シンティエンディー)に繰り出し晩ごはん。大阪で「新天地」というと「串カツ、どて焼」なイメージだけど、こちらの新天地は至ってお洒落。我々のお気に入りはSTEAMという中華レストランでした。

翌日、帰りの飛行機の中でフォトグラファーのオノデラユキさんとアキルミさんにバタ合い。お二人とも普段はパリに暮らしておられるのですが、最近オープンした民生現代美術館(Minsheng Art Museum)の開館記念展に作品を出展しており、レセプション出席のために上海にいらしていたとのこと。今後上海が、アジアにおけるアートの一拠点として果たす役割は増々大きくなりそうです。(今月29日まで京橋のZeit-Foto Salonにてアキルミさんの個展が開催されています。)


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コメント 2

kedama

東京仮面のNYとはまた違ったカンジで素敵ですね。
気になる展示もある! 見たいな〜
上海って、台湾とも違うし、中国〜ってカンジでもないですね。
整然と、でも色鮮やかっていうか…

kiyoさんって写真がお上手ですね。って当たり前か…
1号もおもろいけど、kiyoさんの
街並とかなにげないやつが好きっす!
by kedama (2009-09-16 02:48) 

kiyo

そうですね。上海の街って東洋と西洋、古いものと最先端のものがグシャッとブレンドされて独特の雰囲気が醸し出されている感じです。

写真褒めてくれてありがとう。写真はズブの素人ですが、デジカメの性能のおかげでそれなりに写ってます。本当は一眼レフとか買ってもっと凝りたいのだけど、旅行の際に荷物がかさばるのが嫌で…。
by kiyo (2009-09-16 19:03) 

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