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東南アジア3都市反復横跳び 2008(バンコク最終編) [海外出張記]

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チャオプラヤー川の夕暮れ。

8月5日
早朝にハノイのホテルをチェックアウトして空港へ。お昼前にバンコクに着き、一旦ナムトンさんのギャラリーに寄って、カミンにチェンマイから送ってもらった出来立てのブロンズ像を手持ち用に梱包した後ホテルへ。そろそろ旅の疲れも溜ってきたし、晩にはナムトンさんの家族と会食する約束をしているので午後はのんびりホテルで過ごすことにし、取りあえず水着に着替えてプールサイドに寝転がる。最近良く利用しているのはReno Hotelというサイアム近くのホテルで、一泊1,500バーツ(約5,000円)という手頃な値段ながらロケーションも良く部屋もこぎれいで、おまけに小さいながらもプールまで備わっている。もう一つ、The Atlanta HotelというスクンヴィットのSoi 2にあるホテルも、まるでウォン・カーウァイの「花様年華」に出て来そうなレトロな内装が素敵なのだが、残念な事に客室の設備が今一つなので最近は泊まってない。(*補記:2010年春に上記のReno Hotelに宿泊しましたが、隣に高層ビルが建設中で工事音がうるさく、また残念ながらプール際の視界も遮られてしまったので、それ以降このホテルは利用していません。)

プールでひと泳ぎした後部屋に戻ってベッドでうとうとしていたら、ナムトンさんからの電話で目が覚める。急いでトゥクトゥクを捕まえナムトンさんの奥さんが勤めるチュラロンコーン大学付属の図書館へ。学校帰りのお嬢さん二人とも合流し、ナムトンさんの車でお薦めの海鮮料理店に向かう。バンコクに来る度に、ナムトンさんには家に泊めてもらったり、こうしてご家族と一緒に食事をしたりとすっかり家族ぐるみのお付き合いになっているが、最初に出会った時にはまだ小さかったお嬢さんたちもすっかり成長し、年に1、2度顔を合わす僕は今や親戚のオジサン的存在と見なされているのかもしれない。美味しいものに目がないナムトンさんの折り紙つきとあって、出て来る料理はどれも申し分なし。特に蟹は絶品でした。来年の春休みには一家で日本旅行を予定しているとのことなので、その時はうんと美味しい所に案内しなきゃ。


ハノイ出発の朝、ホアンキエム湖畔の眺め。


おもちゃの様なトゥクトゥクに乗ると、バンコクの町も何だか遊園地みたいに見えてくる。

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ナムトンさんの自慢のお嬢さんたち。二人の前ではナムトンさんもすっかり優しいパパの顔。


8月6日
いよいよ出張最終日。いつもならバンコクに来るとピナリーさんのお宅にお邪魔するのが恒例だけど、彼女はこの4月からサンフランシスコ近郊のレジデンスプログラムに滞在していてまだタイに戻ってきていない。そこで今日は一日、バンコクのアートマップBAMを片手にギャラリー巡りをすることにする。

まず向かったのは、サイアム・スクエアにあるArt GorillasWhitespace Gallery。この2つのスペースは、Lidoという映画館が入っているビルの片隅に隣り合っていて、Art Gorillasはストリートっぽいグラフィティ中心の作品が並び、一方Whitespaceの方ではOhm Phanphirojという写真家の個展が開かれていた。どちらも人がおらず、Whitespaceの方は電気も消えていたが、これは節電のためか、はたまた性転換者のヌード写真という過激な内容のため、検閲を避けるために照明を落としていたのかは定かではない。
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Art GorillasとWhitespaceがあるビルには、他に日本のコミックやアイドルグッズを扱うショップがちらほら入っていて、少々寂れた中野ブロードウェイといった雰囲気。

次に訪ねたのは、各国大使館が立ち並ぶ高級住宅街にある100 Tonson Gallery。こちらでは2002年の「アンダー・コンストラクション」展にも出展していたモントリー・タームソムバットの個展が開催中で、「NANOTHAILAND」というタイトルの下に、異種の文化的混合から成り立つ現代タイ社会における「タイらしさ」を探求したコンセプチャルな写真連作が並んでいた。折よく在宅中だったオーナーのエイさんとも話ができたが、これから秋のアートシーズンを迎えるに当たって、シンガポールのアートフェアの出展の準備などに追われて多忙な様子だった。ここのところアジアのアートマーケットは中国やインドを筆頭にヒートアップしているが、多くの優れた作家を抱えるタイにも、海外コレクターの視線は着実に集まってきているようだ。
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Montri Toemsombat 'NANOTHAILAND' at 100 Tonson Gallery, Bangkok

次に向かったのはシーロム通りのヒンドゥー寺院の近くにあるKathmandu Photo Gallery。オーナーはタイを代表するフォトグラファー、マニット・スリワニチプーンさんで、ちょうど2階のギャラリースペースでは彼の新作による個展が開催中だった。マニットさんは現代消費社会を痛烈に批判した「ピンク・マン」シリーズで有名だが、今回の個展では無邪気に微笑む子供や少年僧のポートレイトが並んでいる。説明を読むと、彼らはHIVに感染して生まれて来た子供たちで、誤解や偏見を受けながら社会から切り離されて暮らすことを余儀なくされているこうした子供たちの姿を世間に伝えるために撮られたものという。さすが社会派のマニットさんらしい視点だ。
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Manit Sriwanichpoom 'Life is Beautiful' at Kathmandu Photo Gallery, Bangkok

再びBTSに乗り込み終点のタクシン橋のたもとへ。ここからボートに乗ってチャオプラヤー川を渡り、ナムトンさんから話を聞いていたナウィン・ラワンチャイクンの回顧展へと向かう。ナウィンさんといえば映画の看板のような巨大な絵画で有名だし、回顧展というからには余程広いスペースが必要なはずだが、はて、この辺りにそんな展覧会場はあったかな?と思っていたら、対岸にあるガラス張りのモダンな建物の前に船が着いた。どうやらこの建物は現在開発中の高級レジデンスのモデルハウスのようで、ぴしっと水兵服で身を固めた守衛さんが出迎えてくれた。展示内容は回顧展と呼ぶにふさわしく、入り口にはペイントされたVWビートルが置かれ、会場内には等身大のナウィンさんのフィギュアや長さ9メートルにも及ぶ新作のペインティングなどが並んでいる。特に上階に展示されていた2006年作の'Lost in the City'という大作は圧巻だった。
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Navin's Sala by Navin Rawanchaikul at The River Promenade, Bangkok
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「阿運(ナウィン)同志語録」という「毛沢東語録」をもじった本を持つ陶器製の人形。昨年北京のTang Contemporary Artで開催された展覧会の折、ナウィンさんはこの「阿運同志語録」を道端で配るパフォーマンスを行い公安に連行されたと聞いたが、まさかこんなものまで作っていたとは。

もう一軒、近くにあるGallery Verにも寄りたかったが、時間もなくなってきたのでチャオプラヤー・エクスプレスで川を北上し、以前アバウト・カフェがあったスペースへ。ここは以前展示スペースを備えたカフェとなっていて、国内外から著名なアーティストを招いたり、ノイズ系のバンドのギグを行なったりとバンコクでも最も刺激的な場所の一つだった。3、4年程前から展覧会などの活動を休止してしまっていたが、ちょうど今回の出張の出発前にメールで案内が届いたので、これは是非寄らねばと思っていたのだ。居合わせたアーティストに尋ねて分かったのだが、実際はアバウト・カフェが復活したのではなく、10年程前にここでグループ展を開いた十余名の若い作家が再び結集し、来年3月まで1年間の期限を設けてこのスペースを借り受けたもので、As Yet Unnamedという名前の下に様々なプログラムを展開しているとのことだった。このグループの活動方針を熱心に説明してくれたのはアリンという運営アーティストの一人で、上の世代のアーティストとは異なる価値観を持つ自分たちにフィットした美術環境を作り出して行こうという姿勢が印象的だった。
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Suwitcha Dussadeewanichという作家の展示。電気ノコギリがぶら下がったギロチンのような装置が鎮座し、TVモニターにはシラパコーン大学の展示室の壁面を張り替えるという行為を写した映像が流れていた。
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ホアランポーン駅近くの中華街の中にある元About Cafe/About Studioのスペース。

そろそろ空港へ向かう時間が近付いたので、地下鉄とBTSを乗り継いでホテルに戻り荷物をピックアップ。タクシーに飛び乗り一路スワンナプームに向かう。バンコクのタクシーの運転手は話好きな人が多く、熱が入ると後ろを振り向きながら運転して危ないのでなるべく助手席に座るようにしているのだが、この運ちゃんもしかり。互いに少ないボキャブラリーを駆使しながらも結構話が盛り上がったので後部座席に座ったのが悔やまれたが、さすがに高速に乗ると運転に集中してくれた。空港に着くと、「バンコク、バイバーイ」と見送ってくれたのが何だか嬉しかった。
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地下鉄に乗る前にホアランポーン駅を一巡り。学生の頃、この駅から列車に乗ってアユタヤやスコータイの遺跡を巡りながら北上したのが懐かしい。いつかまた、あんな行き当たりばったりの旅をしてみたいものだ。
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スワンナプーム空港に到着。バイバイ、バンコク。


8月7日
翌朝成田に着くと、余りの暑さにびっくり。確か南の国から帰ってきたはずなのに、明らかにバンコクよりも暑い。ギャラリーに直行して溜まった用事を片付けている内にすっかり日も暮れ、日常に戻ると何だかやっぱり時間も早く過ぎるようだなあと思っていると、外からバン、バンと爆発音が。そうだ、今夜は神宮外苑の花火大会でした。
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ギャラリーのビルの屋上より花火鑑賞。夏だー。

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