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香港&第4回広州トリエンナーレ [展覧会 / 他会場]

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先週末オークションウィークに合わせて香港に出掛けてきました。26日と27日の両日にわたり開催されたクリスティーズの「20世紀&コンテンポラリー・アート」の秋期メインセールに合わせ、その前後に台湾系、中国系、韓国系、日系のオークションハウスによる売立が目白押し。5月の香港アートフェアに合わせたオークションウィークと並び、年2回のアジア圏における主要なアートイベントとしてすっかり定着した感があります。オークションの結果を見てみると、中国現代アートの高騰はやや減速傾向にあるようですが、その分、趙無極(ザオ・ウーキー)ら評価の固い大家の作品に人気が集まった模様。今回狙っていた作品は競り負けてゲットできませんでしたが、代わりに中国系のオークション会社から依頼を受け出品していたカミン・ラーチャイプラサートのブロンズ作品がまあまあの値段で落札されたのでほっと一安心。最近ではartprice.comなどのデータベースを通して落札価格が公開され、それがひとつの基準となってしまうので、扱っている作家の作品をオークションに出すのは結構慎重にならざるをえません。

オークション終了後、重慶マンション前で香港在住のアーティストツァン・キンワと待ち合わせて夕食。ここ数年の間にすっかり国際的な作家となり引っ張りだこの彼ですが、穏やかで控えめな性格は以前と変わらず。ロック好きな彼とは再結成したストーン・ローゼスの話題などで盛り上がりました。(ちなみにキンワは現在森美術館のNAM PROJECTで映像インスタレーションを展示中です。)

翌朝、ホンハム駅から国際列車に乗り込み広州へ。2時間弱程度で列車は広州東駅に到着し、そこからタクシーで広州トリエンナーレの会場である広東美術館へと向かう。広州を訪れるのは、最初のトリエンナーレが開催された2002年以来9年振りですが、当時町のあちこちで大規模な再開発の突貫工事行われていたのが、今タクシーの窓の外に広がっているのは、所々にポストモダン風建築が散在し、すっかり落ち着いた近代都市へと生まれ変わった街並みでした。

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広州トリエンナーレの会場、広東美術館のエントランス。美術館は広州市内を流れる珠光に浮かぶ二沙島に建ち、辺りには公園やコンサートホール等の文化施設があります。

美術館に着くと、エントランス部分が何やら緑色の工事用のスクリーンで覆われ、その上に大きく「元問題」という文字が。中で説明を読むと、広州美術館はこれから3年掛けて改修・増築工事を行うそうで、これを機に美術館という存在自体そのものを今回のトリエンナーレのテーマに据えたとのこと。ちょうどこの日は会期最終日とあって若者を中心にかなりの人出で賑わっていました。展示の構成は、3フロアある建物の1階と2階は各展示室ごとに中国作家を主とする一名の作家を紹介する個展形式、最上階の3階は、インドネシアのヘリ・ドノらアジア圏のアーティストを集めたグループ展示となっていました。

今回わざわざ広州まで足を運んだのは、roomで紹介している2組のアーティストが出展していたから。一人はタイのカミン・ラーチャイプラサート、もう一組はミャンマーのトゥン・ウィン・アウンとワー・ヌアーティストカップル。カミンの作品はタイの田舎で独り暮らしをする老婦人の一日を淡々と追った映像作品で、トゥンとワー・ヌはヤンゴンの街中に見られる仮設の売店を模したインスタレーションを展示。どちらの作品にも彼らの日常生活に根ざした問題意識や考察が色濃く反映されていて、香港のオークションのプレヴューにて成金趣味のおもちゃめいた作品を散々目にした後では、尚更強く説得力をもって感じられました。

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カミン・ラーチャイプラサート「自然は決して変わらない、なぜなら変化こそ自然だからだ」(Nature Never Changes Because Changing Is Nature) 2chビデオ、41分44秒、2011年

この作品は、チェンマイ郊外に暮らす老女の生活を追ったもの。早くに夫を亡くし、息子は町に働きに出たため独り暮らしを送る彼女は、植物の世話をしたり薪を集めたりして気を紛らわせながら孤独な日々を送っている。人間が社会的動物とするなら、家族は社会を構成する最小の単位。近代化により家族が分断されたなら、果たして社会はどうなるのだろうか?



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トゥン・ウィン・アウン&ワー・ヌ「箱の家」(Boxhouse) インスタレーション/ビデオ、サイズ可変、2011年

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ダンボールでできた小屋の正面には「SAVE THE AYEYARWADY」(イラワジ川を救え!)のメッセージが書かれています。これはミャンマー政府がイラワジ川上流に建設予定していた大規模なダム工事に言及したもので、これに対し世論は自然破壊や流域に暮らす人々の伝統的な生活文化の破綻に繋がるとして猛抗議を行ない、結局政府は計画自体を保留するとの発表を行なうことを余儀なくされた。

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