SSブログ

「水域」作品紹介 その1 [展覧会 / room]

現在Art-U roomにて開催中のチャン・ユンチア個展「水域」も、そろそろ会期中盤に差し掛かりました。非常に緻密な細部表現が特徴のユンチアの絵画作品ですが、そのために来場者の方々も、一点一点じっくりと時間をかけて見て行かれる方が多い様です。実は、昨年最初にクアラルンプールからの作品運送費の見積をとった際、かなりの高額となったため、一時は送ってもらう点数を減らそうかとも考えたのですが、こうして多くの方が丁寧に鑑賞されていく姿を見ると、やはり連作全点を展示できて良かったと思います。

もう一つ、鑑賞の手助けとなっているのが、会場で配布している作品解説。これはユンチア本人が英文で書いたものを拙訳したもので、今回の連作が生まれた経緯と各作品に対するコメントが記されています。この連作では、ユンチアの個人的な記憶や、あるいは日本では殆ど報道されていないものの、マレーシア国民であれば誰もが知っているような事件や出来事が織り込まれた作品が多く、この解説を参照することで、作品をより深く理解して頂けるのでは、と思い用意しました。会期中こちらのブログでも、この解説の中より何点か作品をピックアップして紹介したいと思いますが、まず一回目はこちらの作品。


=============================================


IMG_0836.jpg

「この瞬間」  The Moment 2015年、油彩・キャンバス、75x150.5cm
 
 昔、生きた鶏が市場で売られていた頃、人々は買った鶏を持ち帰りやすいように新聞紙で包み、家で絞めて調理したり、あるいは数ヶ月間飼った後に殺して調理した。当時、新聞紙に包まれた鶏は普通の光景であったが、今はそうではない。その習慣が行なわれなくなって初めて、私は、鶏を新聞紙に丸め込み、紐で締め付ける行為が極めて残酷なことであると気付いた。
 
 この絵の中の新聞紙に見られる記事は、現在マレーシアのメディアを賑わせている幾つかの出来事について書かれたものである。私たちは、これらの出来事を当然の事と見なしているが、実際のところ、新聞紙に包まれた鶏と同じ位異常な出来事なのである。


=============================================


IMG_1051_2.jpg
画面中央部分のアップ。実際に英文の記事が読める程細かく書き込まれています。記事の内容は、昨年マレーシアのメディアを大いに賑わしたナジブ首相の汚職疑惑や、モンゴル人モデルの殺害事件、それに携帯電話の窃盗事件を発端に起こった中国系住民とマレーシア系住民間の抗争イスラム教徒によって豚と勘違いされたウォンバットのキャラクターが撤去された事件など。更に良く見ると、記事は行列をなしたアリたちによって形作られていて、報道の持つ恣意性が示唆されているようです。


IMG_1048.jpg
こちらは画面左上部分のアップ。雲をつく巨人が雄鶏を後に従えて歩み去っています。良く見ると巨人は、右手にスマホを持っているようです。



「水域」始まりました。 [展覧会 / room]

IMG_8459.jpg

チャン・ユンチア個展「水域」、いよいよ始まりました。先週のオープニングには大勢の方にお越し頂き大変ありがとうございました。ユンチアと奥さんのミンワさんも、多くの方々とお話することができ大変喜んでいました。重ねてお礼申し上げます。

IMG_0982_380.jpg

IMG_0990_380.jpg

展覧会は、今月28日まで続きますので、表参道方面にお越しの際はどうぞお気軽にお立ち寄り下さい。
____________________________
チャン・ユンチア「水域」 Chang Yoong Chia 'Body of Water'
会 期:2016年2月5日(金)〜28日(日) 
    火〜土曜 12:00-19:00 日曜 12:00-17:00  月・祝休廊
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F (Google map


IMG_1022_500.jpg

旧正月だった昨日は、インディペンデントの演劇人として国際的に活躍するリム・ハオニェンさんが、旧友ユンチアの個展を見に駆け付けてくれました。リムさんは現在、NPO法人DANCE BOXのレジデンスプログラムに参加し神戸に滞在中で、来週開催される「What Price Your Dance」というイベントの演出を手掛けられています。シンガポールやタイ、カンボジアなど、アジアにおけるコンテンポラリーダンスの現場を長年にわたってリサーチしてきたリムさんならではの面白いイベントになりそうですので、ご興味のある方はぜひ!


チャン・ユンチア「水域」 [展覧会 / room]

cyc_aquarium_500.jpg
チャン・ユンチア「水槽」(部分) 油彩・キャンバス、2015年、75x150.5cm

Art-U roomでは来週2月5日(金)より、マレーシアのアーティスト、チャン・ユンチアによる個展「水域」が始まります。中国系移民の三世として1975年クアラルンプールに生まれたチャン・ユンチア(章永佳)は、マレーシア芸術学院にて絵画を専攻し、卒業後これまでにマレーシア国内外にて数多く作品を発表してきました。彼が用いる技法や素材は多岐に渡り、2005年の第3回福岡アジア美術トリエンナーレでは刺繍によるワークショップを開催したり、2013年に横浜美術館と熊本市現代美術館を巡回した「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術展」では、食器として用いる陶製のレンゲに絵を描いた作品「芭蕉の娘」を出展しています。またユンチアは、海外のレジデンスにも多く参加しており、札幌のS-AIRに滞在した際には、北海道産のホタテ貝や蟹の甲羅にペイントを施した作品、また、インドのバンガロールのレジデンスでは、地元の植物園で採集した葉に手を加えたこんな素敵な作品も作っています。

本展で展示される新作の油彩画16点は、昨年の夏から4ヶ月弱という短期間に一気に描き上げられました。ここ数年来、大量の切手を細かくカットしてコラージュするという大変手間のかかる手法による製作に専念していたユンチアですが、その間に普通の油彩画が描きたいという気持ちがふつふつと高まっていたのだそうです。ユンチアによると、この「水域」の連作を描き始めた時には特にテーマを定めていなかったものの、作品を描き進める内に次第に「水」のイメージが浮かび上がってきたとのこと。完成された作品には、海や川、雨など水にまつわる様々な場面が、ユンチアの幼少期の記憶や空想からマレーシアの風土や歴史に関するものまで、ヴァラエティに富む題材と織り交ぜられながら寓話風に描かれています。そう言えば完成した作品の画像を初めて目にした時、ふと、金子光晴の「マレー蘭印紀行」のことが頭をよぎりました。放浪の詩人が戦前のマレーシアを旅した体験を綴ったこの紀行文の中でも、密林の中を這う様に縫って流れる川や、真夜中の突然の驟雨といった「水」に関するイメージがとても印象深く描かれていたからかもしれません。

moonlight.jpg
チャン・ユンチア「月光」  油彩・キャンバス、2015年、85x66cm

なお、展覧会初日2月5日(金)夕刻からのオープニングレセプションには、ユンチア本人の他に、奥さんでライターのミンワさん、それにマレーシアを代表する現代アートギャラリーRichard Koh Fine Artのオーナーのリチャードさんも出席されます。特に予約などは不要ですので、皆さまどうぞお気軽にお立ち寄り下さい。

____________________________
チャン・ユンチア「水域」 Chang Yoong Chia 'Body of Water'
会 期:2016年2月5日(金)〜28日(日) 
    火〜土曜 12:00-19:00 日曜 12:00-17:00  月・祝休廊
    オープニングレセプション 2月5日(金)18:00-20:30
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F (Google map


英ゆう「ソラカラキタル」展、いよいよ明日まで。 [展覧会 / room]

IMG_0373.jpg

現在Art-U roomにて開催中の英ゆう個展「ソラカラキタル」、いよいよ明日23日(月・祝)最終日を迎えます。本日英さんご本人も奈良より上京され、作品を前に新作の制作背景や技法について詳しく話を伺うことができました。明日最終日も、絵のモデルになっているワクくん(1歳4ヶ月)と一緒にギャラリーにて皆さまのお越しをお待ちしています。どうぞお見逃しなく。

____________________________
英ゆう「ソラカラキタル」 Yu Hanabusa 'SO-RA-KA-RA-KI-TA-RU'
会 期:2015年11月10日(火)〜23日(月・祝) 
    火〜土曜 12:00-19:00 日曜 12:00-17:00  *11月16日(月)休廊
    作家在廊予定日 11月22日(日)・23日(月・祝)
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F (Google map


12/24 追記
英ゆう「ソラカラキタル」展昨日無事終了致しました。ご来場頂きました皆さま、大変ありがとうございました!下記リンク先に展示風景をアップしましたので、今回の展示を見逃された方はぜひご覧ください。

英ゆう「ソラカラキタル」展、好評開催中。 [展覧会 / room]

現在Art-U roomにて開催中の英ゆう個展「ソラカラキタル」、今週より会期後半に入りました。ご来場者の中には今回初めて英さんの作品を見られる方が多いのですが、以前の作品をご存知の方は作風の変化に驚かれているご様子です。確かに以前の作品では、プルメリアや千日紅といった南国の植生が鮮やかな色彩で画面一杯に描かれていた印象が強いのですが、本展の新作では柳や松といった日本的な植物が余白を伴いながら装飾的に描かれています。また今回初めて試みた麻のキャンバスに顔彩で描くという手法も、茶味がかった麻の風合いに顔彩の緑色が映え、思いの外しっくりと馴染んで見えます。

IMG_0123.jpg
右より「空から降ってきた子と出遭う」、「暴柳」、「緑風」(いずれも麻のキャンバスに顔彩と鉛筆、2015年作)


IMG_0131.jpg
右より「巴三葉」、「柳静」、「柳床」(いずれも麻のキャンバスに顔彩と鉛筆、2015年作)。左は2011年の旧作「高野山の灯籠と和束の茶畑」(キャンバスに油彩)。中央奥は2009年タイ滞在時に制作された版画作品。


会期はいよいよ来週23日(月・祝)まで。最終日二日間は英さんもギャラリーに来られますので、ぜひお立ち寄り下さい。

* 英さんの在廊時間の目安は、22日(日)午後2~5時、23日(月・祝)午後2~6時となっています。なお、当日の都合により在廊時間が変更となる場合がありますので、宜しくご了承下さい。

____________________________
英ゆう「ソラカラキタル」 Yu Hanabusa 'SO-RA-KA-RA-KI-TA-RU'
会 期:2015年11月10日(火)〜23日(月・祝) 
    火〜土曜 12:00-19:00 日曜 12:00-17:00  *11月16日(月)休廊
    作家在廊予定日 11月22日(日)・23日(月・祝)
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F (Google map
プレス・リリース:


英ゆう「ソラカラキタル」明日始まります。 [展覧会 / room]

IMG_0137.jpg

いよいよ明日より英(はなぶさ)ゆう個展「ソラカラキタル」が始まります。英さんといえば、度々訪れ滞在制作を行なったタイの日常風景に基づくカラフルで明るい色彩の南国的なイメージが思い浮かびますが、この度展示する新作では、どこか琳派を思わせる装飾的な日本画風の表現が見られます。画材もこれまで主に用いてきた油絵の具に替え、日本画の顔彩で描かれいますが、何でも昨年の出産を境に油彩画の色に対し違和感が生じ、ふと手元にあった顔彩の絵具を用いて描いてみたところ不思議なくらい筆が運んだのだそうです。また、木に実った少年や女性の姿をした犬は以前の作品にも見られたモチーフですが、今回の作品では出産直後の我が子の姿や自分自身の中に感じた「獣」性が投影されているとのことです。

現在奈良にお住まいの英さんですが、まだお子さんも小さいため明日はオープニングを行なわず、その代わりに22日(日)と23日(月・祝)の最終日両日ギャラリーに来て頂くことになりました。時間帯によっては不在にされている場合があるかもしれませんので、ぜひご本人と会ってお話されたいという方は、事前に電話かメールにてご連絡の上お越し願います。

____________________________
英ゆう「ソラカラキタル」 Yu Hanabusa 'SO-RA-KA-RA-KI-TA-RU'
会 期:2015年11月10日(火)〜23日(月・祝) 
    火〜土曜 12:00-19:00 日曜 12:00-17:00  *11月16日(月)休廊
    作家在廊予定日 11月22日(日)・23日(月・祝)
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F (Google map
プレス・リリース:


カミン・ラーチャイプラサート個展 "Before Birth - After Death" 始まりました。 [展覧会 / room]

IMG_4367.jpg
昨日よりArt-U roomでは、カミン・ラーチャイプラサート個展「Before Birth - After Death」(Sculpture) が始まりました。オープニングに合わせて作家のカミンと本展の共催者であるナムトン・ギャラリーのオーナーナムトン氏もそれぞれ家族を伴って来日し、会場も一気にタイ度数が急上昇。昨晩のレセプションはタイ語が飛び交う賑々しい雰囲気の中で祝うことができました。会期は来月2日までですのでぜひご覧下さい。

_____________
■ カミン・ラーチャイプラサート「Before Birth - After Death」(Sculpture) 
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F(最寄り駅:東京メトロ 表参道駅B2出口)
会 期:2014年10月10日(金)− 11月2日(日)
    火−土曜12:00-19:00  日曜12:00-17:00 / 月・祝休廊


10418367_10152937202059245_7839585431864642621_n.jpg
カミンを真ん中に右にナムトン・ギャラリーのナムトン氏。左にバンコクにあるAkko Art Galleryの東京オフィスの大串氏。


10665231_10152937201759245_2270353225131378047_n.jpg
今回カミンは奥さんと息子さん、ナムトン氏は奥さんと奥さんの弟さんと来日されました。以前は東南アジアから作家を招へいするには、いろいろと書類を揃えたり一苦労しましたが、昨年からタイからの短期旅行者のビザが免除となり随分日本に来やすくなりました。


10/14追記

なおカミンは、バンコク芸術文化センターで現在開催中の "Thai Charisma: Heritage + Creative Power"(タイのカリスマたち:遺産+創造力)展にも出展中で、前回2009年のroomでの個展にて紹介した "Beyond..." のブロンズシリーズを展示しています。
charisma.jpg


また、グッゲンハイム財団とUBSの新プロジェクト「MAP」の特設サイトでは、昨年グッゲンハイムに収集されたバーツ紙幣でできた366体の彫刻のシリーズ "Sitting (Money)" の他、カミンのインタビューやトーク、チェンマイで行なっているプロジェクト等について動画と写真で詳しく紹介されています。
ap_lertchaiprasert_Sitting-Money_902.jpg
Kamin Lertchaiprasert “Sitting (Money)” 2004-2006, a set of 366 papier-mâché sculptures from shredded Thai bank notes


カミン・ラーチャイプラサート個展、10月10日スタート。 [展覧会 / room]

目下roomでは、来月10日より始まるカミン・ラーチャイプラサートの個展「Before Birth - After Death」の準備に追われています。展示作品の方は先週バンコクから到着しましたが、心配していた楽焼の連作も全て破損無く届き、ホッとひと安心しました。

boxes.jpg

この楽焼のシリーズは全部で12種類の図柄があり、試作期間を含め4年掛りで今春やっと完成されたました。その進行状況はこれまでこのブログでも何度か紹介してきましたが、このプロジェクトでアシスタントを務める陶芸家のジュンが制作を担当し、カミンのデッサンによる原画を粘土で立体に起こしながら、自作の窯で一点一点焼き上げていったものです。中には焼成中に割れてしまったり、釉薬が思ったように発色しなかったりといった事が度々あり、試行錯誤を重ねながらようやく全てのイメージが揃いました。

firing.jpg
制作風景。左が陶芸作家のジュン。

今回の展覧会では、この楽焼の連作12体のうちの6体。残りの6体は別のアトリエで作られたブロンズ製の作品をミックスして展示致します。下のリンク先よりPDF版のプレス・リリースをダウンロードできますので、作品コンセプト等の詳細はこちらをご参照ください。


稲垣智子「Forcing House」今週末まで。 [展覧会 / room]


IMGP2155.jpg
現在Art-U roomにて開催中の稲垣智子個展「Forcing House」、会期もいよいよ残すところ二日余りとなりました。春分の日の本日は、三連休の初日とあって昼下がりから夕方にかけ続々と多くの方にご来場頂きました。ところでお客さまから作品に関してご質問を受けることも多々あるのですが、本展で幾度か尋ねられたのは、「映像の女性はどうして青い服を着ているのか?」というもの。稲垣さんにメールで問い合わせたところ、次のような返事が届きました。

アリスをイメージしています。
物語の中にアリスが大きくなるシーンがあります。
少しファンタジックな要素を入れています。

250px-Alice_par_John_Tenniel_11.jpg
なるほど。僕が昔読んだ「不思議の国のアリス」はモノクロのイラストだったので、アリスの服の色までイメージしてなかったのですが、ディズニー版アニメ「ふしぎの国のアリス」では、確かにアリスは青い服をまとってますね。ファンタジックな要素といえば、前回の稲垣さんの個展「soap opera」にて展示した写真のシリーズでも、「白雪姫」や「ラプンツェル」といった童話が題材とされていました。




それからネックレスを円形に配置したこちらの作品「Moon」については、
IMGP2190.jpg

Moonはネックレスでできていて、そのイメージが強いです。
虚飾的な意味合いと同時にネックレスが首を想像させるところがあるので、
自分の中では生命を感じさせるところというイメージがあります。
太陽*と月は自然の象徴です。

* 昨年の京都芸術センターでの展示では、同じくネックレスでできた更に大型の作品「太陽 - Sun」が、温室のインスタレーションと一緒に展示されました。


なお最終日3月23日(日)は会場に稲垣さんが在廊予定ですので、作家本人とお話したい方はぜひご来廊下さい。

_______________
稲垣智子「Forcing House」
会 期:2014年3月8日(土)〜23日(日)
    火ー土12:00-19:00 日12:00-17:00 / 月休、3月21日(金・祝)は開廊
会 場:Art-U room 渋谷区神宮前5-51-3ガレリア3F(Google Map)
詳 細:PDF版プレスリリースはこちらからご覧頂けます。


稲垣智子「Forcing House」開催中。 [展覧会 / room]

現在Art-U roomにて開催中の稲垣智子個展「Forcing House」、早くも会期前半を終え折り返し地点を迎えました。遠方から来られた方や久々にお顔を拝見する方、連日多くの方々にご来場頂きありがとうございます。今回メインの展示となる「Forcing House」は温室風の構造物を用いた映像インスタレーションで、ご来場者の方は温室の中に入って鑑賞して頂く体感型の作品となっています。大体皆さん5分程で出て来られるのですが、中には温室の中に入ったきり気配が無くなる方もいて、「あれっ、もしや消えた…」とドキリとすることもあります。(そう思うのは、この温室がどこかマジックショーの大道具に似ているせいでしょうか。)

イメージ 3.jpg

ちなみにネタバレとなってしまいますが、温室の中に置かれている植物は本物のものと造りもののものが混在しており、毎日ギャラリーに来るとまずは霧吹きで葉っぱを湿らせるの日課となっているのですが、ついつい造りものの方にも水をかけてしまう程区別が付きません。初日のトークで稲垣さんが話されていましたが、造花は本物よりも花弁が大きかったり色が鮮やかだったりしてニセモノと分かりやすいのですが、イミテーションの観葉植物に関してはそうした人為的な誇張が少ないため一層本物との区別がつきにくい。対象によって人の美意識の働きかけ方が異なるということを考えるととても興味深く思われます。


IMGP2094.jpg
ギャラリーの突き当たりの壁には、床から天井まで一面に壁紙状の作品「Night」が貼られ、その上に切り絵を額装した作品3点が飾られています。切り絵の作品はどれも二つ折りにしたミラー紙をカットした後に広げているために左右対称、のはずですが、どこかが違う。稲垣さんの説明では、向かいあった二人に見える人物は、実はひとりの同じ人物であるとのことです。


IMGP2097.jpg
こちらも擬シンメトリーな構図を持つシルクスクリーン作品「Night」。上の壁紙と同じパターンが使われていて、今回の展覧会のためにアトリエKAVCの協力を得て制作されました。その制作過程はこちらで詳しく紹介されています。


spring cut#3.jpg
ギャラリー奥の小スペースでは、2004年の個展「soap opera」にて展示したビデオ作品「spring」と写真作品数点を展示しています。稲垣さんが過去に参加した展覧会のカタログやポートフォリオ等の資料もご覧頂けますので、お時間ある方はこちらもどうぞ。


* 3/20 追記
今週TOKYO ART BEATのスタッフの方が来られて、こんなすてきなビデオクリップを作って下さいました。


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。