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KYOTOGRAPHIE & KG+ 2020 [展覧会 / 他会場]


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 福島あつし「弁当 is Ready」展示風景、会場 伊藤佑 町屋

 

Art-U roomでは昨年末に、前回より新設された公募セクション"KGSELECT"の受賞者3/組による展示を行いましたが、今年のKYOTOGRAPHIEおよびKG+には、その内、グランプリを受賞した福島あつしさんと、パリファーストフロアギャラリー賞に選ばれたウスイチカさん(昨年は旦那さんとのユニット、チカ&イチオ ウスイとして参加)のお二人も参加されています。もう一名、来場者投票によるパブリックアワードに選ばれたアルメル・ケルガールさんも、本来ならアンスティチュ・フランセ関西での展示が予定されていたのですが、残念ながらコロナの影響によりキャンセルとなってしまいました。

 

最初に訪れたのは、"KGSELECT”の会場となる西本願寺近くの元・淳風小学校。最近廃校となった古い小学校校舎を利用したこちらの建物では、国内外の応募者の中から審査委員会によって選ばれた10名の写真家が、各々教室一部屋を使って展示を行っていました。福島の原発事故、香港の民主化デモ、性暴力といったシリアスなテーマを扱った作品が、それぞれに説得力のある展示方法で並ぶ中、ユーモラスな案山子の子供達が教室に並ぶウスイチカさんの展示室に入った時は、なおさらほっこりとしました。一見ポップに見えるこの展示も、裏には、過疎化が進んだ限界集落と作家自身の家庭崩壊の物語が秘められていることを知ると、ネガティブなテーマも朗らかに跳ね返そうとする作家の意気込みと逞しさを感じました。

 

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ウスイ チカ「The Beautiful Kakashi World」展示風景、会場 元・淳風小学校

 

 

次に訪れたのは、四条烏丸近くの町屋で行われていた福島あつしさんの展示。こちらは昨年の"KGSELECT”にてグランプリを受賞した「弁当 is Ready」を再構成したもので、福島さんが10年にわたり高齢者への弁当配達の仕事を続けながら撮り溜めた写真が、隣り合う町屋二軒を使って展示されていました。最初の町家では、雑然と散らかった独居老人たちの部屋の様子や配達途中の街の風景を写した作品が並び、一方、次の町屋では、老人たちの姿を身近に捉えたポートレートを中心に展示されていました。この構成は、あたかも、当初老人たちの暮らしぶりにショックを受け、葛藤を覚えた福島さんが、次第に、死に近付きながらも粘り強く生きようとする老人たちの生を肯定するに至るまでの心境の変化を追体験するかのように思えました。会場の町屋は、近々取り壊される予定だとのことですが、玄関で靴を脱ぎ、狭くて急な階段を登ったり、座敷に座ったりと、生活感の残る空間を移動しながら鑑賞することにより、作品のテーマが更に強く実感を伴って感じられたように思います。

 

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 福島あつし「弁当 is Ready」展示風景、会場 伊藤佑 町屋

 

 

なお、この町屋は5軒ほどの家が続いた長屋風の造りになっていて、奥側の二棟では、オランダのアーティスト、マリアン・ティーウェンの展示が行われていて、こちらも見応えがありました。どちらの作家の展示も、ヴァーチャルでは伝わらない内容なので、ぜひ現地で体験して頂きたいと思います。

 

 

翌日まず向かったのは、出町柳のつぼみ堂で開催されているイギリス人写真家、マーク・ヴァサーロの個展「going with the FLOW」。ヴァサーロさんは禅に関心を持って来日し、以来30年近く日本に暮らしている方で、花を被写体としたプラチナプリント作品が代表作となっています。近年は伊豆下田に窯を構え陶芸にも取り組んでいて、この展覧会でも写真と一緒に、素敵な陶芸作品を展示されていました。会場のつぼみ堂は、町屋を改装して先月オープンしたばかりのギャラリースペースで、この展覧会がこけら落としとなります。なお、この出町柳エリアには、鴨川デルタを挟んで、やはり先月オープンしたばかりのKYOTOGRAPHIEの常設スペースDELTAもあるので要チェックです。

 

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マーク・ヴァサーロ「going with the FLOW」展示風景、会場 つぼみ堂

 

 

その後岡崎エリアに移動し、今年5月にリニューアルオープンした京都市京セラ美術館(旧京都市美術館)を訪れました。この美術館に立ち寄るのは2014年のバルテュス展以来でしたが、すっかりスマートに改装された建物に驚きました。ちょうど当日は、京都市とアンスティチュ・フランセ関西が主催するニュイ・ブランシュ KYOTOの開催日で、こちらの美術館でもパフォーマンスやライブイベントが行われて多くの来場者で賑わっていました。4月の緊急事態宣言期間中には閑散としていた京都駅周辺も、外国人観光客の姿はほとんど見かけなかったものの以前の人出が戻ってきていて、まだまだ気は抜けないながらも、展覧会やこうした回遊型のアートイベントを楽しめる状況が徐々に戻ってきたことを大変嬉しく感じました。今回は時間的な制約もあり、ほんの一部の展示しか見ることができませんでしたが、ここ数年の混雑ぶりに足が遠のいていた京都の街中を、久し振りにのんびり歩き回る機会を得られたのも良かったです。

 

 

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京セラ美術館で行われていたパフォーマンスの模様

 

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■ KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
会期:2020919日~1018
https://www.kyotographie.jp


■ 
KG+
会期:2020918日~1018
http://www.kyotographie.jp/kgplus/2020/

 

 

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*2020/11/20追記

KYOTOGRAPHIE会期は終了しましたが、上記ブログ記事にて紹介した福島あつしとマリアン・ティーウェンの展示が、期間限定で再オープンすることになりました。詳細はこちらのサイトにてご確認下さい。

https://www.kyotographie.jp/news/#id5997

 

 


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