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「水域」終了致しました。 [展覧会 / room]

チャン・ユンチア個展「水域」は先週末をもって終了致しました。会期中ご来場頂きました皆さま、本展の開催にご協力頂きました皆さまに改めてお礼申し上げます。

残念ながら展覧会を見逃してしまったという方は、Art-U roomのfacebookサイトに展示の模様をアップしましたので、ぜひこちらのリンクからご覧下さい。

展覧会は終了しましたが、本展の案内状に画像を使用した作品をまだ紹介していませんでしたので、遅ればせながらこちらの作品をもって最後の作品紹介とさせて頂きます。

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「水槽」 Aquarium 2015年、油彩・キャンバス、75x150.5cm
 
 毎朝、私が扉を開けると、ペットである犬の唐三彩は、背伸びしてあくびをしながら私に挨拶する。それから私たちは散歩に出掛ける。毎朝私は近所の人々に会い、彼らは私たちに挨拶する。この絵に描かれた人々は、私のご近所さんの何人かだ。
 
 この絵を描いている最中、マレーシア全土は、公正な選挙の実施と首相の辞職を求める、今までで最大の街頭デモに備えていた。その数ヶ月間というものの、マレーシアに暮らす私たちは、誰もがその事ばかりを話題とし、誰もがその事ばかり考えていた。
 
 デモが終結した後、唐三彩はめでたくも起こった出来事のことなどすっかり忘れ、以前と同じ様に私に挨拶するだろう。近所の人たちも、私たちを見掛けたら、依然として私たちに挨拶するだろう。けれども、ひょっとしたら彼らは既に変わってしまっているのかもしれないし、もしかしたら私も変わってしまっていて、そしてその後もまだ変わり続けるのかもしれない。しかし、この絵の中では、唐三彩は水槽の中に留まり、ガラス越しに現実の世界を眺めている。



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日本では安保法案反対デモで騒然となっていた昨年の夏、マレーシアでは現政権を担うナジブ首相の退陣を求める大規模なデモが開かれていました。ナジブ首相の汚職疑惑に端を発したこのデモの背景には、長年にわたる人種間の摩擦や権力による言論統制、景気の低迷等が挙げられており、首都クアラルンプールでは25万人ともいわれる多くの人々が参加しました。

*デモの詳細に就いてはこちらのリンク先をご参照下さい。

ちょうど世間がこのデモに向かっていた頃に描かれたこの作品「水槽」は、ユンチアが暮らすクアラルンプールの自宅近所の風景を題材としたもので、描かれた人々も実際に近所の人々をモデルにしたのだそうです。日々顔を会わす人々の間にも、このデモを契機として微妙な距離感が生まれたのでしょうか。ガラス越しに世界を見ているのは、犬ではなく、人間の方かもしれません。

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道を掃いている左端の人物はインドネシアからの出稼ぎ労働者。その右隣はインド人。その他は中国系住民とのこと。もともと70年代に市内中心部で商売を行なう中国系マレーシア人のために造営された住宅地だそうで、現在でも住民の多くは中国系の人々だそうです。

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そしてこちらがこの絵の主人公の唐三彩(タンサンチャイ)。眼に病気がありドッグシェルターにいれられていたのを数年前に引き取ったのだそうです。

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