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とあるギャラリストの休日 - 奥多摩編 [展覧会 / 他会場]

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国立奥多摩美術館エントランスに佇む館長の佐塚真啓氏。


ギャラリーの定休日である月曜に恒例としている月曜トレッキング。ところがここ最近の月曜は天候に恵まれず、今朝も起きてみると雨降りだったので悶々としていたところ、予報によると昼から晴れるというので取りあえず新宿から青梅方面行きの電車に乗った。出発が遅かったので近場の高水山辺りを歩こうかな、と思い軍畑駅で降り、折よく射してきた気持ちの良い日差しの中ルンルンと山を目指して歩いていると、川沿いに何やら怪しい建物が。製材所っぽい作りの建物の入り口に、大きく『国立奥多摩美術館』と書かれている。余りにも胡散臭い感じだったので、ここはひとつ見なかったことにして通り過ぎようと思ったのだけど、「果たしてこんな人気の無い所で何を展示しているのだろう..?」と、ついつい中を覗いてしまったのは美術を生業としている者の悲しい性也。

中には二人の青年がいて、恐らく向こうも突如ハイキング姿で現れた闖入者のことを胡散臭く思ったに違いないが、懇切丁寧にこの不可思議なスペースについて説明してくれた。その話によると、元々木材置き場だったこの場所を三年程前から数名の作家がアトリエとして使い始め、そして折しも僕が訪問した三日前に『国立奥多摩美術館』という名称のオルタナティブスペースとして立ち上げたばかりだとのこと。記念すべき最初の開館記念イベントは「青梅ゆかりの名宝展」という7名の若手作家によるグループ展で、その場にいた二人の青年は一人が出展作家の永畑さん、もう一人が館長の佐塚さんでした。

その後館長直々に展示作品を一つ一つ案内して頂き、何となくここで展示している作家の傾向や方向性も見えてきた。美大出身のR30世代の彼らは、それぞれ彫刻や映像、建築などのメディアを用いながらも、どちらかと言うと完成された作品よりも、制作過程や行為それ自体に重きを置いているようで、敢えて常識を逸脱した一見馬鹿馬鹿しい、あるいは過激な設定を設けて現実世界にアプローチしているように思えた。これは先日見た「MOTアニュアル2012-風が吹けば桶屋が儲かる」展でも少し感じたことで、この世代の作家達は、それより上の世代の作家たちが「美術史」という大きな物語を視野に置いた上で、常にこれを参照し関連付けながら制作を行っていたのに対し、彼らはそれを一旦棚上げし、自分たちの手が届き実感出来る範囲の中で新たなゲームの規則を作り、そこから自己や自分を取り巻く環境を理解する手掛かりを得ようとしているように思える。

そんなことを考えながら作品を見ているうちに、最初はちょっと覗くだけのつもりだったのがすっかり長居してしまった。(美術館というだけあって、ちゃんとカフェまであった。)写真も沢山撮らせてもらったのだけど、あの雰囲気はやっぱり直接行って体感した方が良い気がするのでブログに載せるのは止めにする。結局山歩きの方はコースを大幅に短縮することになったけど、途中思い掛けず立派な野生の鹿に遭遇できたので良しとしよう。なお上記の展覧会は11月25日(日)までの開催。奥多摩の紅葉シーズンもあとしばらくなので、ご興味のある方は合わせてちょっとユニークなアート鑑賞はいかがでしょうか。



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こちらが奥多摩美術館の入場券。入場料(500円)を払うと、ウィイーンと半券を切ってもらえますよ。



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