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Art Stage Singapore 2011 [海外出張記]

2週間のシンガポール・タイ出張より戻って参りました。短期間に多くの人や物事と出会いまだ頭の中が混乱気味ですが、まずは前半シンガポールの報告から。

この度参加したアート・ステージ・シンガポールは今回が初開催となる新しいアートフェア。プレス発表当初から、現時点でアジア圏で最も成功している香港国際アートフェアに対抗し、現代アートのハブ都市としての覇権を争うべくかなり戦略的にプランニングされたフェアだという印象を受けました。ディレクターにアート・バーゼル等のディレクションで経験豊かなロレンツォ・ルドルフ氏を起用したことには、マイアミに次ぐ成功例をつくり出そうという意志が感じられました。

会場となるマリーナ・ベイ・サンズはシンガポールの新たなランドマーク施設。同敷地内には昨年オープンして話題になったカジノの他、3棟の高層ビルの上に空中庭園を冠した高級ホテル、有名ブランドショップが軒を連ねるショッピングモール、美術館、劇場、そしてフェアの会場であるコンベンションセンター他が完成されたばかりの姿で偉容を誇っていました。

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会場内には約120軒の出展ギャラリーのブースが並びますが、ブースや通路の間取りがゆったりしているため余り圧迫感はありません。また会場の一画には、「Project Stage」と呼ばれる若手作家の紹介に当てられたセクションが設けられ、そちらにはやや小振りのブースが約30軒程並びます。参加ギャラリーには、エマニュエル・ペロタンやマールボローといった欧米のギャラリーも見られます
が、大多数はアジア圏からの出展。特にインドネシアやアレーシア、タイといった周辺国のギャラリーやアーティストの存在感が大きかったことに地勢的なものが感じられました。これらのギャラリーの中には、最近シンガポールに支店を開いたところも少なくなく、ビエンナーレ開催や新美術館の開館を踏まえた上でのアートの集積地としてのシンガポールの求心力は、あるいは予想以上のスピードで働きだし始めている模様。

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Art-U roomのブースでは、アニッシュ・カプーアが1993年-95年に日本で行なった「瓢箪プロジェクト」の作品と、カミン・ラーチャイプラサートの新作ペインティングによる展示を行いました。

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オープニングには、カミンと親しいリクリット・ティラバニャや、シンガポールに新たにアート・オフィスをオープンしたキュレーターのジョセフ他、大勢のアート関係者に立ち寄ってもらいました。偶然フェアに出展していて会場でバタ合いしたアーティストも多く、北京のチョンミン、インドネシアのエディーさんにメラさん、マレーシアのヨンチア、タイのワッサンさん他まるで同窓会のよう。

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裏手のMAD(Museum of Art and Design)のコレクション・ブースで展示されていたアイ・ウェイウェイ(Ai Wei Wei)のインスタレーション。清朝時代の卓と梁や柱とを組み合わせた作品。

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こちらはLinda Galleryのブースで行なわれていた旧友シ・チョンミン(Xu Zhongmin)の個展。階段を登って金属製の円筒の中を覗き込むと、、

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写真では少し分かりづらいですが、下から上に向かってはしごをよじ登る無数の人影が動きながら臨場感たっぷりに迫ってきます。チョンミンの父親は四川劇の監督で、彼も小さい頃から役者達のアクロバティックな動きに慣れ親しんで育ちましたが、こうした「動き」は、彼の初期の木版作品から一貫してテーマとなっているものです。

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Valentine Willieのブースで展示されていたメラ・ジャルスマ(Mella Jaarsma)の作品。彼女は以前から、動植物の皮等を用い衣裳の形をしたシェルター状の作品を発表してきましたが、今回の出展作品は無数のワッペンを縫い合わせて作られたもの。オープニングの晩には実際に着用してパフォーマンスが行われました。

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Richard Koh Fine Artのブース前に飾られたタイのアーティスト、ナティー・ウタリット(Natee Utarit)の巨大ペインティング。彼はここ数年来ブレイク状態にある実力派ペインターで、シンガポール美術館でもちょうど大規模な個展が開かれていました。

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「Singapore Platform」と名付けられた大きめのブースでは、地元シンガポールのアーティスト8名の作品が紹介されていました。こちらは映像や演劇といったメディアを用いて国際的に活躍するミン・ウォン(Ming Wong)の作品。ウォン・カーウァイの「花様年華」の1シーンを素材としたもの。

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同じくシンガポールの作家ドナ・オン(Donna Ong)のインスタレーション作品「In Xanadu Did Kubla Khan」。今回現地スタッフとしてフェアを手伝ってもらったカレンのお薦めの作家で、机の上に積み上げられた陶器類のけばけばしい装飾は、中国系移民と地元マレー人の混合によって生まれたプラナカン文化を象徴するものだとのこと。

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「Project Stage」のセクションにて、Gallery Tagboatのブースに展示されていた栗林隆のインスタレーション。昨年森美術館で開催された「ネイチャー・センス展」出展作品の縮小版で、数カ所に開けられた穴から頭を出して紙でできた森の景色を覗ける仕組み。

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こちらも「Project Stage」のセクションより、マレーシアの3人のアーティストによる「12号雑貨店」。その名の通り本物さながらの雑貨店の中に日用品やお菓子等が所狭しと並べられていて、所々に小さなアート作品が忍ばせてある。

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フェアと連動してシンガポール美術館で翌日開幕した「Collectors Stage」のオープニング風景。この展覧会はアジア現代アートの著名コレクター達から借り受けた作品を展示したもので、1階ホールではインドネシアのコレクターが所蔵する奈良美智の小屋が登場。フェアのオープニングにて奈良さんご本人にもお会いしました。

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こちらは倉庫街にある「Collectors Stage」の別会場。ナム・ジュン・パイクやLuo Xu, Agus Suwage, TV Santhoshの作品など。別の棟ではRonald Maullang, Zeng Fanzhiらのペインティングが展示。

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フェアの会期中、シンガポールのアーティストソンミン・アンがちょうどThe Substationにて展示を行なっていたので早速訪問。彼とは昨年ARCUSのレジデンスに滞在している際に知り合いましたが、「音」を媒体としたリレーショナル系の作品を作る今後が楽しみな若手作家です。この「You And I」というプロジェクトは、ソンミンが自身のサイトを通して一般の人々に私的な事を綴った手紙を送ってもらうよう呼び掛け、届いた手紙の内容に合わせて選んだ曲をCDに焼いて送り返すというもの。いわば音の処方箋といったところ。

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例えばこの方は、人間関係やらとかく悩み多くて眠れずに困っていると綴られていますが….ソンミンが選んだ曲は、Radioheadの'Go to Sleep'Bat For Lashesの'The Big Sleep'といった具合。

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ちなみにこの日奥のシアターでは、フェアにも出展していたインドネシアのMelati Suryodamoらのパフォーマンスが上演され、別の部屋では楽器持ち寄りのセッション的なものが進行中でした。この部屋の反対側では座禅を組みひたすら瞑想に耽る一人の男性がいたり、久々に訪れたSubstationですが、ひょっとして以前よりもアングラ度上がってる?

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今回フェアのアシスタントを務めてくれたカレンを紹介してくれたのはソンミン。その後カレンの旦那のベンも交え皆でアラブ街のエジプト料理店でディナー。カレンは以前インターンで京都や北海道に住んだことがあり、何でも好きな日本人歌手は美空ひばりと井上陽水とのこと。会場に座っている時いきなり隣で「トカイデハジサツスルワカモノガ…」と「傘がない」の歌詞を朗読しだしたのにはたまげた。


さて、フェアのセールスの方はどうだったかというと、報道によればペロタンが展示していた村上隆の三点組のタブロー「Snow, Moon, Flower」が初日に約1億8千万円で販売されたとのこと。これは別格として、500万円以下の作品の動きは活発だった模様で、roomでも展示したカプーアの彫刻4点中2点、カミンのタブロー8点中2点の売約が決まって経費+αは出来た感じ。周りのギャラリーの方も皆、割と良い結果だったと満足げに会場を去っていきました。プレビューを含む延べ来場者数は3万2千人と決して多くはなかったものの、このフェアを目当てに集まった国外コレクターやシンガポール在住のビジネスマンなど、潜在的な購買意欲はヒシヒシと感じられ、将来に向けて大いに可能性があるフェアだと思いました。後は欧米や東アジアともやや異なるコレクターの趣向にいかに対応していくかが課題です。


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