タイ出張記(バンコク編) [海外出張記]
バンコクのシーロム・ガレリアにあるTang Contemporary Artで開催中のカミン・ラーチャイプラサート個展 '... Wrong Place'(間違った場所)展示風景。スペース中央には、造花が敷き詰められた花畑にピンク色に塗られた二頭の水牛の彫刻が向き合う様に配置され、周囲には前作 'Sitting' の続きとなる大型の木彫が所々に置かれています。
このインスタレーションの出発点となったのは、カミンの友人ソムポックさんが描いた一枚の絵。その絵には、花畑の中を駆ける一頭の水牛が素樸派風のタッチで描かれていて、ある僧侶との出会いを通して仏教思想の叡智に目覚めたソムポックさんが、それまで「間違った場所」に真実を求めていた過去の自分の愚かしさを寓意的に描いたものだとのこと。本来草原や沼地に暮らす水牛は、色とりどりに咲き誇る花畑のまっただ中では食べるべき草を見つけることができずにさ迷うしかないという意味が込められています。
ところでこの絵を見たカミンは、描かれた水牛の立場を現在の世界情勢に重ね合わせ、今日のグローバル化された消費社会の中で我々は「間違った場所」に置かれているのではないか、との問いを本展のインスタレーションを通して投げ掛けています。世界的な景気後退や環境破壊に伴う自然災害、文化的アイデンティティの喪失や衝突等、昨今相い次いで起こっている事件や出来事は、これらの問題に対して根本的に「正しい」解決策が採られていないことが原因ではないか?正に現在バンコクで起こっているデモの騒乱もまた、こうした世界の歪みから生み出された一つの現象であるように思われました。
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■ Kamin Lertchaiprasert: ...WRONG PLACE
会 場:Tang Contemporary Art - Bangkok Silom Galleria B-28, 919/1 Silom Road, Bangkok
会 期:2010年4月18日〜5月29日
■ Kamin Lertchaiprasert: ...WRONG PLACE
会 場:Tang Contemporary Art - Bangkok Silom Galleria B-28, 919/1 Silom Road, Bangkok
会 期:2010年4月18日〜5月29日
翌朝チェンマイよりナムトンさんと一緒にバンコクへ。ナムトン家では新たに子犬が7匹生まれ更に犬屋敷化が進行中。
ナムトンさんは現在新しいギャラリースペースを建築中。見学に向かう車の中でデモの状況をチェック。赤シャツ隊はサイアム通りに本格的なバリケードを構築した模様。
翌日チャチャイさんの招きで知人の料理教室に飛び入り参加。2種のパテとブルスケッタを作った後、皆でテーブルを囲んで楽しいひと時を過ごしました。
その翌日再びチャチャイと合流し彼の自宅へ。すっかり内装も完成し、部屋のあちこちに彼の作品やアンティークのコレクションが飾られています。
その後台北から到着したアートコーディネーターのシンディーさんと落ち合い、郊外にチャチャイが建築中のスタジオを見学へ。出発が遅れたため夕方の渋滞にどハマり。視界の遥か彼方まで車の列が続いてます。
一旦あきらめかけたものの、一時間程で何とかチャチャイさんのスタジオに到着。池が二つもある広大な土地で、メインのスタジオ棟の他、ゲストハウス、キッチンハウスなど5棟程の建物が建設中。バンコクとは打って変わって静寂に包まれ星空のきれいな場所です。
近くで陶器工場を経営しているチャチャイさんの元教え子の方と一緒に近くのレストランで食事。水草が流れ行くのが見える川辺の素敵な所でした。バンコク西方50キロ程のこの地域は、昔盗賊が跋扈した土地として知られているそうです。
翌日レセプション出席のためにチェンマイから到着したカミンと合流。スクンビットSoi31のインド料理店でランチ後、バンコク在住フランス人キュレーターパトリシアさんを交え彼女が現在出版準備中のカミンの作品集の打ち合わせを行いました。
タクシーに乗り込みレセプション会場へ。サイアム方面はBTSプルンチット駅の先で完全に封鎖されていました。
シーロム・ガレリアのカミン個展会場に到着。広い空間をふんだんに使って作品が展示されています。
デモの影響を心配していたレセプションにも続々と人が集まってきました。
スペースの片隅には梱包されたままの彫刻と絵画が置き去りに…。購入する(or したい)人だけが開けて中の作品を見れるというへそ曲がりなアイデア。(カミンに言わせると、アート作品の商品化に対するアイロニックなステートメントとのこと。)
こちらが本展のカタログ。24組の絵画と彫刻は、カミンが自分で撮影した風景写真と組み合わされて、ちょっとしたショートムービー風に編集されています。
タイ滞在最終日、先に台湾に帰国するシンディーさんを見送った後、荷物をピックアップにホテルに戻ると、先月東京で会った照明デザイナーのGunn君にバタ合い。何でも今晩1Fのカフェバーで映画のプロモーションパーティーが開かれるとの事でバンドの演奏も入ってました。カミンとVUの曲に見送られて出発。今回も大変充実した旅になりました。
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